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アーチコラム 夏は大丈夫だったのに、なぜ秋に「すね」が痛くなる? -長距離ランナーのシンスプリントを「練習量」だけで考えない

こんにちは。

静岡県瀬名川にあります、アスリート鍼灸接骨院に勤務している大場と申します。

 

 

私は学生時代、陸上競技の長距離を経験していました。

長距離を走っていると、

「練習後になると、すねが痛い」
「夏は何ともなかったのに、秋になって膝やすねが痛くなった」
「走る距離を増やしたら、急に足が重くなった」
「痛みはあるけど、大会が近いから練習を休めない」

このような経験をしたことがある選手も多いのではないでしょうか。

特に夏から秋にかけては、長距離選手にとって非常に重要な時期です。

夏の暑さの中で練習を積み重ね、秋になると気温が下がって走りやすくなる。

すると、

「もっと走れる」
「ペースを上げられる」
「駅伝に向けて距離を増やそう」

と、練習の強度や量を上げたくなります。

しかし、このタイミングで「すねの痛み」が出てくる選手は少なくありません。

その原因を、

「走りすぎたから」

だけで終わらせてしまうのは、少しもったいないかもしれません。

今回は、長距離選手に多い「すねの痛み」をテーマに、長距離経験者・スポーツ鍼灸接骨院スタッフの視点から解説していきます。

 

 

 目次


 

① なぜ「秋」にすねの痛みが出やすいのか?

 

まず考えたいのが、

「身体にかかる負荷」と「身体が耐えられる量」のバランス

です。

走るという動作は、片脚で身体を支えることを繰り返す運動です。

着地するたびに、足部から足関節、下腿、膝、股関節へと荷重が伝わり、その中でも脛骨には繰り返し大きな力が加わります。

骨は「硬くて変化しない組織」というイメージがありますが、実際には運動による機械的刺激に応じて、常に吸収と再構築を繰り返しています。

問題になるのは、

「骨が適応するスピード」より「負荷が加わるスピード」が速くなったとき

です。

特に、

・走行距離が急に増えた
・ポイント練習の強度が上がった
・坂道ダッシュが増えた
・スピード練習が増えた
・休養が減った
・硬い路面での練習が増えた

などが重なると、組織へのストレスが大きくなります。

つまり、

「走行距離が多い=必ずケガをする」

ではありません。

同じ距離を走っていても、選手の身体がその負荷に適応できているかによって結果は変わります。

長距離選手の骨ストレス障害では、走行距離だけではなく、走行速度、頻度、強度、回復状態などを含めて「トレーニング負荷」を考えることが重要です。


 

② 「シンスプリント」と「疲労骨折」は同じではない

 

長距離選手の「すねの痛み」でよく聞くのが、

シンスプリント

です。

医学的には、

Medial Tibial Stress Syndrome(MTSS)

と呼ばれます。

一般的には、すねの内側に沿って比較的広い範囲に痛みが出ることが多く、走る・ジャンプするなどの繰り返し荷重によって症状が誘発されます。

一方で、注意したいのが、

脛骨の疲労骨折を含むBone Stress Injury(骨ストレス障害)

です。

骨ストレス障害は、繰り返される荷重によって骨に微細なダメージが蓄積し、身体の修復能力を上回った状態を指します。

軽度のストレス反応から、疲労骨折まで連続した病態として考えられています。

では、何に注意すればいいのでしょうか?

 

シンスプリントで比較的みられやすい特徴

・すねの内側に沿って広い範囲が痛い
・走り始めや運動後に痛みが出る
・運動量によって症状が変化する

骨ストレス障害を疑って注意したいサイン

・すねの限局した一点が強く痛い
・押したときにピンポイントで強い痛みがある
・走っていないときにも痛い
・歩行でも痛みが出る
・ジャンプで強く痛む
・症状が徐々に悪化している

もちろん、症状だけでシンスプリントと疲労骨折を完全に判断することはできません。

特に強い局所痛や安静時痛、歩行痛がある場合には、無理に練習を続けず、整形外科などの医療機関で評価を受けることが重要です。


 

③ 「走り方」がすねへの負担を変える

 

ここで、スポーツ現場では非常に重要なポイントがあります。

それが、

「どのくらい走ったか」だけではなく、「どのように走ったか」

です。

ランニングでは、接地するたびに地面から身体へ力が返ってきます。

このとき、

・接地位置
・ストライド
・ピッチ
・走行速度
・体幹の位置
・足部の動き
・足関節の可動性
・股関節のコントロール

などが、下肢への荷重のかかり方に関係します。

例えば、走行速度が上がると脛骨への力学的負荷が増加することが報告されています。

また、ストライドを大きくすることでも脛骨への負荷が増える可能性があります。

だからといって、

「前足部で走ればケガをしない」
「踵から着地すると悪い」

という単純な話ではありません。

ランニングフォームは、体格・速度・競技レベル・筋力・可動性などによって変化します。

大切なのは、

その選手にとって、現在の走り方が過剰な負荷を特定の組織に集中させていないか

という視点です。


 

④ 自宅でできる!長距離ランナーのセルフチェック

 

ここまで読んで、

「自分の身体は大丈夫なのかな?」

と思った方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、長距離ランナーにぜひ確認してほしいセルフチェックをご紹介します。

ただし、これはあくまで身体の状態を確認するための簡易チェックです。

痛みの有無や強さだけでケガを診断することはできません。

特に強い痛みや局所的な圧痛、安静時痛がある場合は、無理にチェックや練習を行わず、医療機関への相談をおすすめします。


 

CHECK① すねの「痛む範囲」を確認

まず、すねの内側を指で軽く触れてみましょう。

□ 広い範囲に痛みがある
□ 一点だけピンポイントで痛い
□ 押さなくても痛い
□ 歩くだけでも痛い

特に、

「ここだけが明確に痛い」

という局所的な圧痛や、安静時・歩行時にも痛みがある場合は注意が必要です。

シンスプリントだけではなく、脛骨の骨ストレス障害なども鑑別する必要があるため、自己判断で走り続けないようにしましょう。


 

CHECK② 片脚カーフレイズ

壁などに手を添え、片脚で立ちます。

そこから、かかとをゆっくり上げ下げします。

左右それぞれ10〜20回程度を目安に行ってみましょう。

 

チェックポイント

□ 左右で回数に差がある
□ 途中からふくらはぎがつる
□ すねやアキレス腱に痛みが出る
□ 足首がグラグラする
□ かかとの上がり方が左右で違う

カーフレイズは、下腿三頭筋だけでなく、足部を含めた荷重能力を確認する簡単な方法です。

長距離走では、片脚で身体を支えながら繰り返し推進するため、下腿の筋力・持久力が十分にあるかを確認することは重要です。


 

CHECK③ シングルレッグスクワット

片脚で立ち、ゆっくり膝を曲げて戻します。

まずは5回程度行ってみましょう。

鏡の前で行うと分かりやすくなります。

チェックポイント

□ 膝が内側に入る
□ 骨盤が左右に大きく傾く
□ 足の外側に体重が逃げる
□ 足部のアーチが大きく潰れる
□ 左右で動きが明らかに違う

これらがある場合、足部だけでなく、股関節や体幹を含めた片脚での荷重コントロールに課題がある可能性があります。

ランニングは、一見すると両脚で走っているように見えますが、実際には接地のたびに片脚で身体を支える動作を繰り返しています。

そのため、片脚で身体をコントロールする能力は非常に重要です。


 

CHECK⑤ 片脚ジャンプ

最後は、少しレベルを上げたチェックです。

その場で片脚ジャンプを5回程度行います。

※痛みがある場合は行わないでください。

チェックポイント

□ 着地で大きくグラつく
□ 膝が内側へ入る
□ 足音が左右で大きく違う
□ 痛みが出る
□ 着地後に身体が大きく沈み込む
□ 左右で跳び方が違う

ランニングでは、一歩一歩の着地が繰り返されます。

そのため、片脚ジャンプで痛みや大きな左右差がある場合には、ランニング時の荷重のかかり方も含めて評価する必要があります。

5つのチェックで、いくつ当てはまりましたか?

ここで重要なのは、

「何個当てはまったらアウト」という考え方ではありません。

例えば、

「すねの一点が痛い」

という症状と、

「片脚スクワットで左右差がある」

という所見では、意味が違います。

大切なのは、

痛み・可動性・筋力・動作・練習負荷

を一緒に考えることです。


 

⑤ 「痛いところ」だけを治療しても繰り返す理由

 

すねが痛くなったとき、

「すねを揉む」
「ふくらはぎをストレッチする」
「湿布を貼る」

という対処をする選手も多いと思います。

もちろん、筋肉の緊張を落としたり、症状を軽減したりすることは大切です。

しかし、それだけでは、

「なぜ、そこに負担が集中したのか?」

という問題が残ります。

例えば、

練習量が急増した

スピード練習が増えた

足関節の可動性が低下している

股関節で十分に荷重を受けられない

疲労でフォームが崩れる

という状態なら、すねにかかる負荷を減らさない限り、症状を繰り返す可能性があります。

だからこそ、

「痛い場所」+「痛みが出るまでの過程」

を見ることが重要です。


 

⑥ 実は「栄養」も骨の強さに関係する

 

もう一つ、長距離選手にはぜひ知っておいてほしいことがあります。

それが、

エネルギー不足です。

長距離選手は、

「体重を軽くした方が速くなる」

と考えてしまうことがあります。

しかし、必要なエネルギーを十分に摂取できない状態が続くと、身体の回復や骨の健康にも影響する可能性があります。

特に女性アスリートでは、低エネルギー状態と月経機能、骨健康の問題が関連することが知られています。

骨ストレス障害の評価では、トレーニング負荷だけでなく、栄養状態やエネルギー availability、女性では月経・ホルモン関連の状態も重要な確認項目です。

つまり、

「練習量を増やす」だけでは強くなれません。

走るためのエネルギーを確保し、

練習 → 栄養 → 休養 → 適応

というサイクルを作ることが重要です。

「最近疲れやすい」「練習についていけない」「ケガを繰り返す」という選手は、身体の使い方だけでなく、練習量・睡眠・食事などを含めて見直す必要があります。


 

⑦ 冬に強いランナーになるために、今やるべきこと

 

これから秋、そして冬に向けて、長距離選手に意識してほしいのは、

「痛みが出たら休む」ではなく、「痛みが出る前に負荷を管理する」

ことです。

特に確認してほしいのが、

① 練習負荷

・走行距離
・練習頻度
・ペース
・ポイント練習の回数
・坂道やスピード練習の量

② 身体の状態

・足関節背屈
・股関節可動域
・片脚スクワット
・片脚ジャンプ
・下腿三頭筋の筋力
・股関節周囲の筋力
・左右差

③ 回復状態

・睡眠時間
・練習後の疲労
・朝の身体の状態
・食事量
・体重の急激な変化

です。

特に痛みがある場合には、

「痛みを我慢して練習を続ける」

のではなく、

「どの負荷なら症状を悪化させずに維持できるか」

を考えることが重要です。

骨ストレス障害からの復帰では、痛みの消失だけでなく、歩行、筋力、機能的な荷重テストなどを確認しながら、段階的にランニング負荷を戻していくことが重要です。


 

まとめ

 

長距離ランナーの「すねの痛み」は、

「走りすぎたから」

だけではありません。

その背景には、

練習負荷
×
身体の組織耐性
×
ランニングフォーム
×
筋力・可動性
×
栄養・回復

など、さまざまな要因が関係しています。

特に夏から秋は、

暑さによる疲労が残る

気温が下がって走りやすくなる

走行距離・スピードが増える

身体への負荷が急激に変化する

すねや膝などに症状が出る

という流れが起こりやすい時期です。

だからこそ、

「痛くなってから治す」のではなく、
「痛くなる前に身体と練習負荷を見直す」

ことが、長く競技を続けるためには重要です。

私自身、長距離選手として練習していた経験があるからこそ、

「大会が近いから休みたくない」
「少しくらい痛くても走りたい」

という気持ちはよく分かります。

だからこそ、選手の「走りたい」という気持ちを大切にしながら、

どこまでなら安全に負荷をかけられるのか
なぜその場所に負担が集中しているのか
どうすれば再発を防ぎながら競技力を高められるのか

を一緒に考えることが、スポーツ現場に関わる私たちの役割だと考えています。

秋の大会、冬の駅伝、そしてその先の自己ベストへ。

「走れる身体」から「走り続けられる身体」へ。

今の時期だからこそ、一度自分の身体と練習内容を見直してみてください。

すねや膝、アキレス腱などに違和感がある方、練習量を増やしてから身体の調子が変わった方、ケガを繰り返している方は、痛みを我慢して練習を続ける前に、一度身体の状態を確認することをおすすめします。

アスリート鍼灸接骨院では、痛みのある場所だけでなく、足部・足関節・膝・股関節・体幹など全身の動きと、競技特性や練習内容まで含めて評価し、一人ひとりに合わせた施術・トレーニングをご提案しています。

「もっと速くなりたい。でもケガはしたくない。」

そんなランナーの身体づくりを、私たちはサポートしています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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